
北京長陽鎮彫刻広場モニュメント計画
Project of Monument for the Sculpture Plaza in Beijing Changyang District
日本基礎造形学会論文集作品集2014 基礎造形 023
Society of Basic Design and art miscellany 2014
Basic Design and art 023


上 効果図
左 夜間効果図
右 エスキース模型

「協栄ーPARTNER SHIP」
デザイン制作年 : 2013年 原作制作年 : 2007年
設定サイズ : 高さ30メートル、幅16メートル、奥行14メートル
設定素材 : ステンレス、鋼鉄、ガラス、蛇紋岩、大理石、陶磁、照明装置、音響装置
1. はじめに
本作品は北京市南西部の新興地域である長陽鎮(日本における町村のレベル)政府に依頼され、制作したモノレール駅前広場と中央に置くモニュメント計画案である。
外国人作家である筆者に今回このような案件の依頼があったのは、当時中央美術学院芸術学院大学院芸術管理 (アートマネージメント) 学科に在学中の次女麗が、長陽鎮長一行の日本視察旅行に通訳として同行した際、長陽鎮におけるアートプロジェクトについて相談を受けたことによる。従って本 作の構想には、企画案の作成と政府との調整に次女の協力があった。また事務的な手続き、構造概念のバックアップと効果図の制作は、清華大学美術学院建築と環境設計研究所(代表陸志成教授)に担って頂いた。
本案は依頼者である長陽鎮長を始め関係者の評価はあったが、このレベルの案件となると上位の地方政府及び新体制となった中央政府のコンセンサスが必要で、次のステップへ進むには1~2年はかかるようである。
2. プロジェクトの概要
このプロジェクトでは、長陽鎮への北京中央からのアクセ スとなっている、モノレールと十字路に挟まれた三角地14,000平方メートルの敷地に、駅前の小公園を設計した。(図1) そこにランドマークとなるモニュメントのデザインをA、B二案作成した。今回はその内のA案のみの発表とする。 本案ではモニュメントの高さが30メートルとして提案され たがその理由として、モノレールからの視点の高さが十数メートルあることと、敷地内に建つ広告塔が22メートルあるの で、これを超える高さが必要とされたからである。 一般にパブリックアートでは、表現される内容即ちコンセ プトと設置場所との関連性を問われることになるが、本案では鎮の三つの都市づくり目標に対応するコンセプトとした。 元々この地域は北京へ貴重な水を供給してきた永定河に沿う農村であった。2~3年後にはダムが完成してダム湖が出現し、 湖畔都市となる水と緑の豊かな地域である。 従ってまず豊かな水を活用するアグリサイエンスシテイ、 次にベッドタウンや保養地として良質のアメニテイ、そして房山大学都市に接していることからIT産業都市を一区画に設 定しており、実現に向けて模索している。 以上の三点をコンセプトとして表現するのに、トルメントの三つの脚部にそれぞれ丸(水を表す)、三角(樹木と屋根を表す)、四角(バーコードを表す)でデザインした。(図2) また公園全体は、モニュメントの設置位置を中心として水紋 状に広がるデザインで、遊歩道とアートワークが置かれる緑 地で構成した。モニュメント台座は円形広場としてイベント やバザー等にも活用できる。 夜間の演出として直立する柱の頭頂部から夜空へ向けてビ ームライトが真っ直ぐ立ち昇る。これはモノレールや車で帰宅する住民が遠くから長陽の位置を知り、安堵感を与えることになろう。
3. モニュメントの造型手法
モニュメントの原案は数年前に既に完成していたエスキース模型によるものである。三つの脚部の螺旋階段状の造形は、 長年取組んできたオバロジー(楕円界)と称する独自の造型 手法によって構成されている。 ベースとなっている半楕円形の長軸は40ミリ、短軸は20ミリずつ小さくなって、32番目では半円形に至っている。また 短軸左端が軌道楕円(青線表示)の分割点上に接しながら3 度ずつ左へ傾いている。そして螺線から垂直へスムーズに立上がるよう30~32番目は傾き角度と軌道との接点位置を微妙 に調整してある。全体のフィギャーは複数の人が重なって動 いている表現で協働を表している。

図1 長陽鎮彫刻公園平面図


水滴ーガラス 緑と家根ー石 バーコードー陶磁
図2 脚部内側の表現
図3 脚部平面図